不動産購入時の頭金とは?頭金ゼロのメリット・デメリットも解説
不動産購入を考える際、多くの人が気になるのが「頭金」についてです。いくら用意すべきか、なぜ必要なのか、頭金なしで購入できるのかなど、さまざまな疑問が浮かびます。不動産購入には多額の費用がかかるため、頭金の金額によって総支払額が大きく変わる可能性があります。とくに、初めての不動産購入では、わからないことが多く不安を感じる方も少なくありません。
ここでは、不動産購入時の頭金について詳しく解説します。頭金の意味や役割から、適切な金額の目安、頭金ゼロで購入する際のメリット・デメリットまで幅広く紹介します。これから不動産購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
不動産購入時の頭金の基本
頭金は不動産購入において重要な要素です。その定義や役割、支払い時期、そして似て非なる「手付金」との違いについて理解することが、スムーズな不動産購入の第一歩となります。
頭金とは
頭金とは、不動産の購入代金を住宅ローンで支払う際に、最初に現金で支払う部分のことを指します。例えば、3,500万円の物件を購入する場合に3,000万円を住宅ローンで借り入れ、残りの500万円を現金で支払うとすると、この500万円が頭金となります。
頭金の主な役割
頭金の主な役割は以下の2つです。
- 総支払額と月々の返済額を減らす
- 住宅ローンの審査に通りやすくする
頭金を多く用意することで、借入額が減少し、結果として総支払額や月々の返済額を抑えることができます。また、頭金を用意することで返済能力があると判断され、ローンの審査に通りやすくなる傾向があります。
頭金の支払い時期
頭金は、一般的に売買契約から物件の引き渡し(融資実行日)までの間に支払います。具体的な支払いタイミングは、不動産会社との契約内容によって異なる場合があります。たとえば、注文住宅の場合は設計料や建物中間金として物件価格の一部を支払うこともあります。事前に不動産会社の担当者に確認しておくことをおすすめします。
頭金と手付金の違い
頭金と似た概念に「手付金」がありますが、これらは異なるものです。手付金は売買契約が成立したことを証明するために支払うお金で、物件価格の5〜10%程度が一般的です。手付金は最終的に頭金の一部として扱われることが多いですが、その役割は異なります。買主が契約を解除する場合は手付金を放棄する必要があり、売主が解除を求める場合は買主に手付金の倍額を支払わなければなりません。
頭金の金額設定と必要経費
頭金の金額を決める際には、適切な金額の目安を知るとともに、頭金以外に必要となる諸費用についても理解しておく必要があります。
適切な頭金の金額
頭金の金額に決まりはありませんが、一般的に物件価格の10%から20%程度が目安とされています。2022年の首都圏新築マンション契約者同行調査(リクルート/リンク)によれば、自己資本比率(住宅ローンに頼らない資金の割合)の平均は22.1%で、前年までと比べてやや上昇傾向にあります。ここから導き出されるのは、5000万円の物件だと1000万円程度、3000万円の物件だと600万円程度の頭金を用意するのが一般的だという予想です。
頭金以外に必要な諸費用
不動産購入時には、頭金以外にも諸費用が必要になります。これらの諸費用は物件価格の3〜10%程度かかると言われています。主な諸費用には以下のようなものがあります:
- 登記費用
- 不動産仲介手数料
- 住宅ローン手数料
- 印紙税
- 不動産取得税
これらの諸費用も考慮に入れて、頭金の金額を決める必要があります。
不動産購入で頭金を用意することのメリット
頭金を用意することには、いくつかのメリットがあります。
総支払額の削減
頭金を多く用意すれば、その分借入額が減少します。借入額が減れば、当然ながら返済総額も減少し、利息の負担も軽くなります。長期間にわたる住宅ローンでは、わずかな利息の違いが数十万円から数百万円の差になることもあります。
審査通過の可能性向上
頭金を用意することで、金融機関からの信頼度が上がり、ローンの審査に通りやすくなります。頭金を用意できるということは、ある程度の資金力や計画性があると判断されるためです。
金利優遇の可能性
金融機関によっては、頭金の割合によって金利の優遇を行っているところもあります。例えば、フラット35では融資率(借入額÷物件価格)が90%以下の場合、それを超える場合よりも金利が低くなります。
頭金ゼロで不動産を購入するメリットとデメリット
近年、頭金ゼロでも住宅ローンを組める金融機関が増えています。これにより、頭金なしでも不動産購入が可能になっていますが、この選択肢にはメリットとデメリットの両面があります。
頭金ゼロのメリット
頭金ゼロのメリットは実にさまざまです。具体的には、好きなタイミングで住宅購入できることや、住宅ローン控除を最大限活用できる可能性などが挙げられます。
早期の購入が可能
頭金を貯める必要がないため、気に入った物件をすぐに購入することができます。不動産市場では良い物件はすぐに売れてしまうことも多いため、このスピード感は大きなメリットとなります。
手元資金の確保
頭金として支払わなくて済んだ分の資金を、生活資金や将来の支出に備えて手元に残しておくことができます。急な出費や、子どもの教育費など、将来の大きな支出に対応しやすくなります。
住宅ローン控除の最大活用
住宅ローン控除は、年末のローン残高に応じて税金が控除される制度です。頭金ゼロでローンを組むと借入額が大きくなるため、この控除を最大限に活用できる可能性が高まります。
頭金ゼロのデメリット
一方で、頭金ゼロで不動産を購入するデメリットには、次のようなものがあります。
総支払額の増加
借入額が大きくなるため、当然ながら総支払額も増加します。また、融資率が高くなることで金利が上がる可能性もあり、さらに総支払額が膨らむ可能性があります。
月々の返済負担増
借入額が大きくなれば、月々の返済額も大きくなります。将来の収入減少や予期せぬ支出に対して、返済が苦しくなるリスクが高まります。
審査の厳格化
頭金ゼロでのローン申し込みは、金融機関にとってはリスクが高くなるため、審査基準が厳しくなる傾向があります。年収や職業、勤続年数などがより厳しくチェックされる可能性があります。
担保割れのリスク
頭金ゼロで購入すると、不動産の価値が下がった場合に「担保割れ」を起こすリスクが高まります。担保割れとは、ローン残高が不動産の価値を上回ってしまう状態のことで、この状態になると物件の売却が困難になります。
頭金の準備方法
頭金を用意する方法はいくつかあります。主な方法を以下に紹介します。
貯蓄
最も一般的な方法は、計画的に貯蓄することです。収入から一定額を頭金用の口座に振り分けるなど、コツコツと積み立てていく方法です。
贈与の活用
親や祖父母からの贈与を活用する方法もあります。住宅取得資金の贈与には一定の非課税枠があるため、税制上のメリットを得られる可能性があります。
財形貯蓄の利用
勤務先で財形貯蓄制度がある場合、これを活用するのも効果的です。給与から天引きされるため、確実に貯蓄を続けられます。
保険の見直し
生命保険や火災保険などの見直しを行い、保険料の支払いを減らすことで貯蓄に回せる金額を増やす方法もあります。
不動産購入で頭金を用意する際の注意点
頭金を用意する際は、以下の点に注意しましょう。
全ての貯金を頭金に回さない
急な出費や将来の支出に備えて、ある程度の資金は手元に残しておくことが重要です。生活防衛資金として、最低でも半年分程度の生活費は確保しておくことをおすすめします。
諸費用も考慮する
頭金だけでなく、前述した諸費用も考慮に入れて資金計画を立てましょう。物件価格の3〜10%程度の諸費用がかかることを忘れずに。
柔軟な姿勢を持つ
頭金の目標額にこだわりすぎると、良い物件を逃してしまう可能性があります。市場状況や自身の状況に応じて、柔軟に判断することが大切です。
まとめ
不動産購入における頭金は、総支払額の削減や審査通過の可能性向上など、さまざまなメリットがあります。一般的には物件価格の20%程度が目安とされていますが、個人の経済状況や将来計画によって適切な金額は変わってきます。一方で、近年は頭金ゼロでの購入も可能になっており、早期の購入や手元資金の確保といったメリットがあります。ただし、総支払額の増加や審査の厳格化などのデメリットもあるため、慎重に検討する必要があります。
頭金を用意するにせよ、頭金ゼロで購入するにせよ、自身の経済状況や将来の計画を十分に考慮し、無理のない範囲で決断することが重要です。また、不動産の専門家や金融機関に相談し、適切なアドバイスを受けることも検討しましょう。
不動産購入は人生の大きな決断の一つです。頭金に関する知識を深め、自分に合った最適な選択をすることで、後悔のない不動産購入を実現してください。