【2024年4月スタート】省エネ性能表示制度とは? 住まい選びで知っておくべきポイント
2024年4月から、建築物の省エネ性能表示制度が始まります。この新制度により、住宅購入や賃貸を検討する人にとって、建物の省エネ性能が重要な判断材料となります。ここでは、省エネ性能表示制度の概要や、消費者にとってのメリット、制度の背景などをわかりやすく解説します。
省エネ性能表示制度の概要
省エネ性能表示制度は、建築物の省エネ性能を可視化し、消費者の理解を促進するための新しい取り組みです。この制度によって、環境に配慮した住宅選びがより簡単になります。
制度の目的
省エネ性能表示制度の主な目的は、消費者が建築物の省エネ性能を容易に把握・比較できるようにすること、省エネ性能の高い住宅や建築物の供給を促進すること、そして環境に配慮した住宅選びを支援することです。これにより、建築物全体のエネルギー消費量削減を通じて、カーボンニュートラルの実現に貢献することが期待されています。
対象となる建築物
この制度は、2024年4月以降に建築確認申請を行う新築建築物と、再販売・再賃貸される物件を対象としています。既存の建築物についても、可能な限り表示することが推奨されています。ただし、既存建築物については、建築時に省エネ性能を評価していない場合もあるため、その特性を踏まえた代替的な表示方法が検討されています。
制度導入の背景
制度導入の背景には、2050年カーボンニュートラル実現への取り組みや、2030年までに温室効果ガス46%削減(2013年度比)という目標があります。また、建築物省エネ法の改正に伴う省エネ基準適合義務化(2025年4月から)や、省エネ性能の高い建築物への需要喚起も重要な要因です。
日本の全エネルギー消費量の約3分の1を占める建築物のエネルギー消費量を削減することは、国全体のエネルギー消費量削減に大きく貢献します。そのため、この制度は環境保護と持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩と言えるでしょう。
住宅の省エネ性能ラベルの見方
省エネ性能ラベルは、建築物の省エネ性能を視覚的にわかりやすく表示するものです。このラベルを理解することで、消費者は建物の性能を簡単に比較することができます。
エネルギー消費性能
エネルギー消費性能は星の数で表されます。国が定める省エネ基準を基準点とし、消費エネルギーが少ないほど星の数が増えます。省エネ基準に適合している場合は星1つとなり、10%削減ごとに星が1つ増加します。星4つ以上の場合は、再生可能エネルギー設備の利用も考慮されています。
例えば、省エネ基準より30%エネルギー消費量が少ない場合は星4つとなります。また、太陽光発電などの再生可能エネルギー設備を導入している場合、さらに星の数が増える可能性があります。
断熱性能
断熱性能は数値で示されます。数値が大きいほど断熱性能が高くなり、省エネ基準適合の場合は4、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の場合は5となります。断熱性能が高いほど、夏は涼しく冬は暖かい快適な室内環境を維持しやすくなり、結露やカビの発生リスクも低減されます。
目安光熱費
目安光熱費は、建物の省エネ性能に基づいて計算された年間の推定光熱費です。ただし、この表示は任意項目であり、実際の光熱費は居住者の生活スタイルによって変動する可能性があります。目安光熱費は、長期的な住居費を考える際の重要な判断材料となります。
ラベルの種類
ラベルは建物の種類(住宅・非住宅・複合建築物)、評価方法(自己評価・第三者評価)、再生可能エネルギー設備の有無によって異なります。それぞれの特徴を理解することが重要です。例えば、第三者評価を受けた場合は、BELSマークが表示されるなど、ラベルの信頼性を示す情報も含まれています。
省エネ性能表示制度のメリット
省エネ性能表示制度は、消費者と事業者の双方にさまざまなメリットをもたらします。この制度を活用することで、より良い住環境の選択や提供が可能になります。
消費者にとってのメリット
消費者にとっては、省エネ性能の可視化により、専門知識がなくても建物の性能を直感的に理解できるようになります。統一された基準で表示されるため、異なる物件間での比較が容易になり、自身のニーズに合った最適な物件を選びやすくなります。
また、目安光熱費により、将来の光熱費を概算で把握できるため、住宅購入や賃貸を検討する際の重要な判断材料となります。長期的な視点で住居費を考える際に、この情報は非常に有用です。
さらに、高い省エネ性能は室内環境の快適性向上にもつながります。断熱性能が高い住宅では、夏は涼しく冬は暖かい環境を維持しやすくなり、一年中快適に過ごすことができます。これは単に快適というだけでなく、健康面にも大きな影響を与えます。
加えて、断熱性能が高い住宅では、ヒートショックなどの健康リスクが軽減されます。特に、高齢者や小さなお子様がいるご家庭では、この点は非常に重要です。室温の急激な変化が少なくなることで、体への負担が減り、より健康的な生活を送ることができます。
事業者にとってのメリット
事業者にとっては、省エネ性能の高い物件を差別化要因として活用できます。高い省エネ性能をアピールポイントとして活用することで、競合他社との差別化を図ることができます。また、省エネ性能が高い物件を提供することで、顧客満足度の向上が期待できます。長期的には、リピート顧客の獲得にもつながる可能性があります。
さらに、省エネ性能の高い物件を扱うことで、市場での競争力が強化されます。特に、環境意識の高い顧客層へのアプローチが容易になります。加えて、環境に配慮した事業展開は、企業のブランドイメージ向上にも寄与します。これは、CSR(企業の社会的責任)の観点からも重要です。
省エネ住宅の選び方
省エネ住宅を選ぶ際は、省エネ性能ラベルを活用しつつ、総合的な判断を行うことが重要です。以下のポイントに注目して選択を進めましょう。
省エネ性能ラベルの確認
省エネ性能ラベルを確認し、星の数や断熱性能の数値を比較することで、建物の省エネ性能を客観的に評価できます。ラベルの種類や評価方法の違いにも注意を払いましょう。
断熱性能への注目
高い断熱性能は、快適な室内環境と省エネ効果をもたらします。断熱性能の数値に注目することで、より快適な住まいを選択できます。断熱性能が高いほど、冷暖房の効率が向上し、結露やカビの発生リスクも低減されます。
設備の省エネ性能
給湯器やエアコンなど、設備の省エネ性能も重要な選択基準です。高効率な設備を選ぶことで、さらなる省エネ効果が期待できます。例えば、ヒートポンプ式給湯器や高効率エアコンの導入を検討しましょう。
再生可能エネルギー設備の検討
太陽光発電システムなどの再生可能エネルギー設備の有無も確認しましょう。これらの設備は、長期的な視点で光熱費の削減に貢献します。また、環境負荷の低減にも大きく寄与します。
総合的な判断
省エネ性能だけでなく、耐震性能や防犯性能なども含めて総合的に判断することが重要です。バランスの取れた住宅選びを心がけましょう。また、将来的なリフォームの可能性や、メンテナンスのしやすさなども考慮に入れると良いでしょう。
省エネ性能表示制度の今後の展望と注意点
省エネ性能表示制度は、今後の住宅市場に大きな影響を与えると予想されます。将来的な変更や注意点について理解しておくことが重要です。
省エネ基準適合の義務化
2025年4月から、原則としてすべての新築建築物に省エネ基準適合が義務付けられます。これにより、市場全体の省エネ性能が底上げされることが期待されます。具体的には、住宅および小規模建築物にも省エネ基準適合義務が拡大されます。
住宅ローン減税との連動
2024年以降、省エネ基準に適合しない新築住宅は住宅ローン減税の対象外となります。住宅購入を検討している方は、この点に特に注意が必要です。省エネ性能の高い住宅を選ぶことが、経済的なメリットにもつながります。
基準の段階的引き上げ
カーボンニュートラル実現に向けて、省エネ性能の基準は段階的に引き上げられる見込みです。2030年度以降に新築される住宅・建築物については、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能の確保が目標とされています。将来的には、より高い省エネ性能が求められる可能性があります。
既存建築物の取り扱い
既存建築物については、高断熱窓・高効率給湯機への改修状況の表示や、実績値に基づく表示など、特性を踏まえた代替的な表示方法が検討されています。既存住宅の省エネ改修を検討する際には、これらの情報も参考にしましょう。
評価方法の理解
省エネ性能の評価方法には「自己評価」と「第三者評価」があります。自己評価は事業者が国の指定するWEBプログラムや仕様基準を使用して評価を行うもので、第三者評価はBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)などの第三者機関による評価です。それぞれの特徴を理解した上で、表示されている情報を解釈することが大切です。
まとめ
省エネ性能表示制度は、消費者と事業者の双方にメリットをもたらす重要な制度です。この制度により、省エネ性能の高い建築物の普及が促進され、環境負荷の低減と居住環境の向上が期待されます。
消費者は、物件選びの際にこの省エネ性能ラベルを参考にすることで、より快適で環境に優しい住まいを選択できるでしょう。一方、事業者の方々は、この制度を活用して自社の物件の魅力を効果的にアピールすることが可能になります。
省エネ性能表示制度は、持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩です。今後も制度の変更や基準の引き上げが予想されるため、最新の情報に注目していく必要があります。環境に配慮しつつ、快適な暮らしを実現する。それが、これからの住まい選びの新しい基準となるでしょう。